ご挨拶

 

 

 日本臨床・教育アドラー研究会の目的のひとつは、専門職の方にアドラー心理学を役立てる機会を提供することです。その方々の日々の仕事にアドラー心理学を活用していただくこと、また、すでに活用している者同士が研鑽を深めていただくことを望んでいます。

 そして、アドラー心理学は歴史と裾野の広さがあるため、アドラーの旗印の元に集まると自然と様々な分野の方々が一堂に介して学際的に交流することができます。これはとても貴重なことだと思います。

 また、この研究会はアドラー心理学そのものを広めることも目指しています。

 すでに日本でのアドラー心理学は偉大な先輩方のご尽力のために、教育相談や生徒指導やクラス運営などの教育における分野ではそれなりの知名度が確立していると思います。しかし、臨床心理学の分野ではよく知られているとは言い難いものがあります。海外に目を転じると、スイスのユング研究所ではフロイトやアドラーも学び、ひとつの事例をこの三人の視点からそれぞれ述べるという練習があるそうです。アメリカの遊戯療法の研修においてもアドラー心理学は必須となっています。また、昨今話題の発達障害の子どもをもつ親への心理教育プログラムにはアドラー心理学の子育て理論が大きく取り入れられています。臨床や教育に生かす心理学の基礎理論として、日本でもアドラー心理学がさらに知られることを願っています。

 さらに、基礎理論としてだけではなく、ブリーフセラピーや認知行動療法などとも一脈通じる性格をもつ先見的セラピーとしても、実証研究にも耐えられる理論や技法としても研究と発展が期待されます。

 日本臨床・教育アドラー心理学研究会が、このように多様な可能性をもつアドラー心理学の魅力を広げ深めていくひとつの場となれば幸いです。

           

     日本臨床・教育アドラー心理学研究会会長 鈴木義也